『15時17分、パリ行き』

『15時17分、パリ行き』

クリント・イーストウッド監督の『15時17分、パリ行き』をDVDで観た。
ロードショー公開時のTVスポットを見て、なんとなく観たいと思っていた。


アムステルダム発、パリ行き特急電車内で実際に起こったテロ事件を題材にした映画。
特急電車に乗り合わせ、テロ犯に立ち向かい制圧した3人のアメリカ人。
実際にその3人が映画で本人の役を演じている。


3人は幼馴染で、うち2人が現役の軍人。
休暇中のヨーロッパ旅行で事件に遭遇する。

基本的には面白かったのだけど、色々な疑問が沸いてくる。


※上記部分は、映画紹介的なあらすじですが、この先は、ネタバレが含まれます。
この映画を観たいと思っている方は、お気をつけ下さい。

 

映画の内容は、想像していたものとかなり違っていた。

電車の中の緊迫した人間模様みたいなものを想像していたのだが、いつまでたっても電車に乗らない。

3人のアメリカ人の落ちこぼれ的幼少期、主役的な男は、軍隊に入ってからも落ちこぼれ。
まあ、それがあってこその、テロ事件での活躍~感動へとつながるわけだけど。

またローマ、ヴェネツィア、ベルリン、アムステルダムと、3人(1人は途中合流)のヨーロッパ旅行の様子も長々と描かれている。


そんな描写が延々と続く割には、テロ犯の事に関しては、全く描かれていない。
テロの目的、組織、人物像など映画を観ただけでは、何一つ分からない。

それはそれで、良いと思う。
アメリカ人3人が突然巻き込まれた、理不尽な事件にどう対処したのか、という部分(だけ)を描くためには、むしろ描かない事で、リアリティーもアップしている。
あくまでも、アメリカ人側からの視点なのだ。


ひとつ、アイディアとして考えたのは、この男(テロ犯)の国、または組織で、この映画と全く同じ手法で、テロ犯の幼少期から、この電車でテロを実行するまでを、詳細に描き出す映画を、もう1本作ってもらえないだろうか、という事。

あくまでも、このテロ犯が、本当に(テロ犯として)実在するのであれば。


というのも「これ本当にあった事件なのか?」という気がして仕方無いのだ。


3人のアメリカ人の他にも、電車内で犯人に撃たれた男とその妻を、実際に被害にあった人物が、本人役で出演しているのだが、全員、ものすごく役者然としているのだ。
メイキングを観ると余計に、それを感じてしまう。


まあ、ただ単にとても演技のうまい一般人という事でしたら「疑ってごめんなさい。心が汚れていてごめんなさい。」という他はありません。


あと、銃を構えたテロ犯に、電車のせまい通路を、数メートルも正面から直線的に突進していく(ヒーロー的)アメリカ人の行動。
これはいくらなんでも、冷静な判断力のある人間の行為とは思えない。
勇気ではなく、ただの蛮勇だろう。
 

犯人も電車の中で一体何がやりたかったのだろうか?
大量殺人だったら、他にやりようがあるだろう的な、そんな考えすら沸いてきてしまう。
私の心が汚れているせいか。
 

そんなこんな、全部ひっくるめて
「これアメリカとフランスが仕組んだプロパガンダなんじゃね?」
と、心の汚れた私は考えてしまうのです。


そんな考えが浮かんでから、この映画に関する評判などネット検索していくつか見てみたのですが、あまりそういう見方をしている人はいませんでした。
(プロパガンダ臭が強いという意見はチラホラあり)

そんな中、かなり踏み込んで、悪質なプロパガンダだと断言している人もいましたが、この人は、なんだか色々とやばそうな(陰謀論的な)ブログを書いている人でした。
(考え方としては面白い)



しかしながら、クリント・イーストウッドがそんな(悪質な)映画撮るかしら?
というね、そんな気持ちも私にはあるのです。


それで、ひとつ思い当たった事があります。

この映画は、事件にいたるまでの、3人のアメリカ人の、幼少期~軍隊生活~ヨーロッパ旅行が描かれていると前述しましたが、そこで描かれた色々な伏線が事件時に回収されていきます。
軍隊で柔術をならっていた、救護班にまわされた、などなど。

その反面、特になんの伏線もないようなヨーロッパ旅行の描写を、多くの人が「長すぎる」「あまり意味が無い」と感じていたようなのですが、その(一見あまり意味の無さそうな)ヨーロッパ旅行の中で、私がとてもとてもひっかかった事がありました。
(検索した中では、そこに触れている人はいませんでした)

それは、ベルリン、ヒトラーが自決した地下壕での事。

ガイドが
「ソ連軍の侵攻によりヒトラーが自決」
と説明すると、アメリカ人驚く。
「米軍が攻め込み、イーグルズ・ネストで自決した。教科書に書いてあった。」
と。

ガイドは
「アメリカの本が間違っています。700キロも離れている。ヒトラーは妻のエヴァとここで自決した。ソ連軍の侵攻で。いつも米国の手柄とは限りません。」

というやりとりがあるのです。
このやりとり!

あまり意味が無さそうなヨーロッパ旅行の描写の中で、このやりとりを描いたのは意味があるのではないのでしょうか?
考えすぎかな・・・

教科書に書いてある事が全部本当の事じゃありませんよ、と。
そのまま全て信じちゃいけませんよ、と。

この映画に描かれている事も、そのまま信じちゃいけませんよ、と。
あえてクリント・イーストウッドは言いたかったのではないのでしょうか?
一番大きな伏線回収。

って、やっぱり考えすぎかな。

Dorutan


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