アコースティック音楽嗜好 ‐57‐

アコースティック音楽嗜好 ‐57‐

民謡、伝承曲からの影響(6)

今回、取り上げる曲は、Third Ear Band「Fleance」

Third Ear Bandを初めて聴いたのは、確か高校1年生の頃、当時、あまり知られていないプログレッシヴロック系のレコードを集めていた友人の家での事。
聴いたのは1stアルバムの『Alchemy』(錬金術)
その時は、正直、退屈な音楽だと思っていました。

ただなんとなく、その音色は若干気になっていて、心の隅に置いたまま数年間。
10代の頃買えなかったレコードを中古盤でドカドカ買うようになっていた私は、Third Ear Bandにも手を出しました。

入手したのは
『錬金術』 – Alchemy (1969年)
『天と地、火と水』 – Third Ear Band (a.k.a. Elements) (1970年)
『マクベス』 – Music from Macbeth (1972年) 
この3枚。

Third Ear Bandは、当時、プログレッシヴロックに分類されていましたが、使っている楽器は、チェロ、ヴァイオリン、オーボエなどに加え、古楽器や、中近東やインドの民族楽器。その音にロック的要素はまったくありません。

そういう楽器を使ったインストの楽曲や、即興音楽的演奏が主になっています。
正直、方法論だけが先に立ってしまったような実験的な曲もあり、若干退屈な面がある事も否めないのですが、古楽やワールドミュージックも聴いていた当時の私は、(高校生の時に比べて)こういう音楽をかなり楽しめるようになっていました。

そして、『マクベス』に収められていた「Fleance」という曲。
この曲だけは、真に特別な物でした。

私が手に入れた3枚のアルバムで、歌詞がある歌物は、もしかしたらこの曲だけだったかも知れません。
そしてヴォーカルが素晴らしい。穢れのない歌声とでも表現したら良いのでしょうか、一聴して心を打たれました。

(この曲に出会った時の気持ちは、少しだけ、Mike Oldfieldの『Ommadawn』ラストに収められた歌(On Horseback)に出会った時の感動に似ています。3部作のラスト、それまで歌詞のある歌は一切なかったので。そしてこちらもまた素敵に心を打つ歌)

この「Fleance」は、歌物というだけではなく、楽曲としても、古楽的な西洋音楽と中近東系の楽器演奏が見事にマッチしていて、曲として完成されたものになっています。
はっきり言って、Third Ear Bandとしては、異質な(ちゃんとした)曲なのですが、後にその意味が分かりました。

このアルバム『マクベス』は、ロマン・ポランスキー監督の映画『マクベス』のサントラアルバムで、その映画の一場面に、少年が歌うシーンがあり、そのために作られた物のようなのです。
レコードで歌っているのも、実際に映画に出演した少年。
なので、他の曲のような即興的な要素、実験的な要素はなく、歌のある楽曲としてしっかりと形作られた曲なのでしょう。

下の動画は、その映画の場面です。
何年か前に、初めてこれを観て、さらにこの曲が好きになりました。


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