須賀敦子『トリエステの坂道』読了(文庫で再読)
先日、BOOKOFFの文庫100円コーナーで、須賀敦子さんの『トリエステの坂道』を見つけました。
このタイトルは、ハードカバーの新刊が発売された時に買って読んでいたのですが、パラパラとページを繰っていると、ハードカバーには未収載の一篇「古いハスのタネ」と、編集者、湯川豊さんによる丁寧な解説文「須賀さんについてのノート」が収載されていたので、この二篇を読みたいがために購入。

それ以外の文章はすべて読んだことがある、とはいえ、110円(税込)ですからね。
むしろ申し訳ないような気持ちで購入しました。
(出版社や作者になにも貢献していないので)
須賀敦子さんの事は、『ヴェネツィアの宿』の新刊発売時に知り、これを読み強く感銘を受け、その後、既刊本を読み漁り、この『トリエステの坂道』は、新刊発売時に購入・・・という流れ。
とにかく『ヴェネツィアの宿』が大好きだったので、てっきり『私を形成しているもの』(ブログカテゴリー)で取り上げて、感想的な文章を書いているものだとばかり思っていましたが、書いてなかった!!
とはいえ、このブログ内で何度も『ヴェネツィアの宿』の事は取り上げられていて、中でもしっかりと触れているのが
ここにもチラリと出てきます。
気が向いたらお読みください。
さて『トリエステの坂道』文庫版。
文庫版のみ収載の部分だけではなく、はじめから全部読みました。

美しいハードカバー版に比べて、随分とそっけない文庫版の装丁。
それはさておき、クロアチアとの国境に近い北イタリアの街、トリエステの事が書かれているのは、はじめの一篇「トリエステの坂道」のみで、他はミラノでの暮らしなどが書かれています。
しかしながら、やはりもっとも印象深いのは、タイトルトラック(って本の場合はそう言わないけど)の「トリエステの坂道」。
敬愛する詩人ウンベルト・サバが愛した街トリエステ。そしてサバがその街でやっていたという書店を訪ねての一人旅。
この文章をはじめて読んだ時に、自分の心の中に広がった風景が、改めて鮮やかに蘇ってきました。
ミラノ・リナーテ空港から夜の便でトリエステに向かう冒頭、リナーテ空港での描写は、ほんの数行なのですが、何度も行っている空港なので、情景がしっかりと浮かんできます。
特に夜のリナーテの様子。
そして到着したトリエステの空港(フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア空港)の、どこか寂しく暗い描写。
私は、ここには、行った事はないのだけど、東西ドイツが統一して間もない頃に行った東ベルリンのリヒテンベルク駅で感じた空気ととてもよく似ているのではないかと、勝手に想像してしまいました。
小説や随筆の中に自分の知っている場所や、感じた空気と似た場所が出てくると、高まりますよね?知らない場所の話を読むよりも、より鮮やかに心に残るというか。
昔読んだ花村萬月の小説に東村山の山崎パンの工場が出てきて、その周辺の景色が手に取るように分かるので、ものすごく高まった経験があります。
それと似た感覚。
ああ、本質的な話を書く前に話がそれまくる。
まあ、とにかく、この項は『トリエステの坂道』を久しぶりに読み直して、はじめて読んだ時の感覚が鮮やかに蘇りました。って所までで終わります。
とりあえず、再読しましたよ、って事で。
『トリエステの坂道』全体の感想やら、文庫本のみ収載の作品の事。
はじめに触れた『ヴェネツィアの宿』の事など、そのうちしっかりと書いてみたいと思います。

まるで姉妹のような『ヴェネツィアの宿』と『トリエステの坂道』
しかし違う出版社から出ている。
同じ方が装丁したのか、もしくは違う方が『ヴェネツィアの宿』を意識して装丁したのか、とても気になります。
【どるたん】
作詞、作曲、歌とギター担当