Category Archive : お気に入りのアルバム

アコースティック音楽嗜好 ‐94‐

お気に入りのアルバム 7

Marc Almond – I’m Not Anyone(2024年発売)

Marc Almond - I'm Not Anyone
Marc Almond – I’m Not Anyone

今日、お友達からマーク・アーモンド(Marc Almond)の話題が出て、その後、久しぶりにアレコレ聴いていました。

私は、80年代のMarc and the Mambas時代のものがとても好きで、当時はかなり聴き込んでいました。
確か、はじめは、お友達女子に『Untitled』を借りて、録音したテープを聴いていたような気がします。
その後、レコードで『Untitled』と『Torment and Toreros』を買って、長い事聴き続けていました。


それ以後、ソロになってからは、CDで2枚ほど買ってはいたのですが、それほど嵌る事もなく、いつのまにか、興味の範疇から外れてしまい、90年代半ば以後に発売されたものはまったく聴かぬまま今日に至っています。

そんな、私の中では、ちょっと忘れられたアーティストになりかけていたMarc Almond

今日、調べてみたら、ずーっとしっかりと活動を続けていて、毎年のようにアルバムを出し続けているではありませんか!?

それで、一番最近の物はどんな感じなのかしら、とSpotifyで探して聴いてみました。

(ここまで長過ぎる前置き)

それが今年発売されたアルバム『I’m Not Anyone』

このアルバム、カヴァーアルバムなのですが、実に味わい深いもの。
音的にも、この「アコースティック音楽嗜好」で取り上げたくなるような、私好みの音作り。
Marc Almondならではの妖しさは若干抑え目で、原曲、元歌に対する深いリスペクトが感じられる演奏っぷり歌いっぷり。
これは間違いなく「お気に入りのアルバム」!

中でも面白いと思ったのは、Ian Andersonが参加した「風に語りて」(King Crimson)

独自の解釈とか、変なアレンジとか、余計な事はせずに、楽器の構成や曲の構成も原曲をかなり忠実になぞるような姿勢に好感を持てます。
歌いまわしや、フルートのメロディーラインなど違う所はあれど、しっかりと原曲に寄り添っています。

他の曲も、一貫してそういう姿勢で作られていると感じました。
(正直、知らない曲も多かったのですが、気になった曲は調べて原曲を聴いてみた)

「風に語りて」以外に、「Smokey Day」(Colin Blunstone)、「Chain Lightning」(Don McLean)辺りは、原曲をよく知っているので、特に興味深く聴く事が出来ました。
(「Chain Lightning」はSteeley Danに同じ名前の曲がありますが同名異曲)

「Smokey Day」の始まり方、音の深み、ヴォーカルの艶など、「原曲よりも好きかも知れない」と思わせるほど味わい深く良いカヴァー。

こちらが原曲、Colin Blunstoneの「Smokey Day」よかったら聴き比べてみてください。

そしてラストに収められた「Lonely Looking Sky」
この曲、私は知らなかったのですが、とても良い曲で、調べたらNeil Diamondの曲でした。

これもまた、原曲のアレンジや楽器構成に寄せた作りになっていながら、しっかりとMarc Almondらしさも感じられる素晴らしいカヴァー。

こちらは原曲、Neil Diamondの「Lonely Looking Sky」

これは、本当に素敵なカヴァーアルバム!
「アコースティック音楽嗜好」的にも最高!

それにしてもMarc Almond、現在まで現役バリバリで、こんなに良い仕事をし続けていたというのに、今まで気にとめずにいた事、本当にごめんなさい。反省しています。

これまでのアルバムも色々聴いてみます。
今後の楽しみが一つ増えました。



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アコースティック音楽嗜好 ‐87‐

お気に入りのアルバム 6

Jethro Tull – Aqualung(1971年発売)

Jethro Tull – Aqualung

1971年発売のJethro Tull、4作目のスタジオアルバム。

このアルバムには、1分台の短いアコースティック曲が3曲収められていて、どれも抒情味溢れる佳曲なので、この『アコースティック音楽嗜好』のカテゴリー「珠玉の小品、隠れた名曲」で取り上げるつもりでしたが、久しぶりにアルバムを通して聴いてみたら、これは「お気に入りのアルバム」で取り上げた方が良いかな、と思い直しました。

ただ、正直なところ、これまで、このアルバムを特に「お気に入り」とは意識していなくて、アコースティック系の良い曲も収められているアルバム、という捉え方をしていました。

というのも、Jethro Tullのアコースティック系の曲は、かなり好きなのですが、ヘヴィーなナンバー、ブルージーな曲に若干苦手意識があるのです。

アコースティック系の優しい曲を歌うと、深みがあり、滋味あふれるイアン・アンダーソンの大好きな歌声が、ヘヴィーな曲、ブルージーな曲になると、途端に暑苦しく苦手な声に感じてしまうのです。

なので、数十年前にはカセットテープにアコースティック系の曲ばかりを集めた『Jethro Tull Acoustic Best』を作って聴いていたほど。

ただ、前述のように、久しぶりにアルバムを通して聴いてみたところ、以前ほどには苦手意識を感じず、丁度良い具合に、エレクトリック曲とアコースティック曲が配分されている完成度の高いアルバムだな、と改めて感じ入ったので「お気に入りのアルバム」として取り上げる事にしました。

その中でも、特に「私はJethro Tullのこういう側面が大好き」という、とても短いアコースティック小品を、このアルバムから2曲紹介して終わります。



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アコースティック音楽嗜好 ‐86‐

お気に入りのアルバム 5

Lisa Knapp – Hidden Seam(2013年発売)

Lisa Knapp – Hidden Seam

日本では昨年公開されたイギリス映画『生きる LIVING』
(黒澤明『生きる』をイギリスを舞台にリメイクしたもの)

この映画のエンドロールで流れたブリティッシュフォーク、トラッド調の歌がとても気になり、調べたところ、Lisa Knappというシンガーソングライター(でフィドル他様々な楽器奏者)の曲だと知る。

これは、彼女の2ndアルバム

伝統的なブリティッシュ・フォーク調の雰囲気と、楽器編成はオーソドックスでありながらも、どこか独自の現代的な感覚を持った曲が、無理なく自然に同居した文句なく傑作と言えるアルバム。

曲によっては、ビョークを思わせるような歌唱と、不思議な空気を感じる。

また、歌いまわしのほんの少しの空気にケイト・ブッシュを感じたり。
ケイト・ブッシュに声が似ているとか、歌い方が似ているというわけでは全くないのだけど、同質の「何か」を感じるのだ。

2人の先人の名前を出してしまったけど、真似のようなものではなく、彼女の持っている空気、描き出す世界と、先人たちの描いてきた世界や持っている空気と重なる部分をこちらが勝手に感じているだけ。

Lisa Knapp、この人の描きだす(音やアートワークなどすべてを含めた)世界には、注目していきたいと思っている。



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アコースティック音楽嗜好 ‐84‐

お気に入りのアルバム 4

Scott Walker – SCOTT 4(1969年発売)

Scott Walker – SCOTT 4
Scott Walker – SCOTT 4

スコット・ウォーカーの4作目のソロ・アルバム。

これまでの作品は、管弦楽団の演奏にのせて歌われるポピュラー音楽という趣。
前作『SCOTT 3』では、多少フォーキーな雰囲気の曲も収録されるようになるのだけど、それでもバックには管弦楽団の音がきらびやかに鳴っている。

この『SCOTT 4』でも、管弦楽団の音はかなり取り入れられてはいるものの、アコースティック・ギターの弾き語り調の曲が多くなっている。

そして、このアルバムの作品は、はじめて全曲、スコット・ウォーカー自身の作詞作曲。
これまでのポップシンガー的なスタンスから、シンガーソングライターへと大きく舵をきったアルバムなのだ。

詞の面でも、プラハの春(の際に起きた事件)に触発されて書いたという「老人は再び “The Old Man’s Back Again(Dedicated to the Neo-Stalinist Regime)”」をはじめとして、スコット・ウォーカーという人の生き方、考え方のスタンスみたいなものが見て取れるようになったのではないだろうか。

個人的な好みになるのだけど、初期の管弦楽強めのサウンドよりも、このアルバムでのアコースティックギターのバックにバランスよく流れる管弦楽の音にとても惹かれる。

サウンド面でも、曲の魅力的にも、初期4枚の中では、このアルバムが群を抜いて好き。



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アコースティック音楽嗜好 ‐83‐

お気に入りのアルバム 3

Marianne Faithfull – North Country Maid(1966年発売)

マリアンヌ・フェイスフル/妖精の歌~マリアンヌ・フェイスフル、フォーク・ソングを歌う

マリアンヌ・フェイスフルのデッカ時代のアルバムで1番好きなのがこれ。
いや、全キャリアで一番好きかも知れません。
1979年『Broken English』でアイランドに移ってからも、またちょっと違った意味で好きなのだけど、なんというか、その後のマリアンヌ・フェイスフルの事は、デッカ時代とは違うアーティストとして見ているのかも知れません。

デッカ時代のマリアンヌ・フェイスフルは、全体的にアコースティックなんだけど、その中でもこのアルバムはブリティッシュ・フォーク、トラッド系のアーティスト達のアルバムと並べても、まったく遜色のないアルバムだと思っています。

発売年を確認するためにWiki(英語版)を見たら、”It was released only in the United Kingdom. “と書いてあって、「いや、日本盤の帯付き見たことあるぞ」と、今度はDISCOGSをチェックしたら、やっぱりありました!記憶に間違いはなかった。


私がこのアルバムを聴いたのは、90年代になってからで、日本初CD化の際に買ったものでした。
収録されているのは、トラッド曲やドノヴァンのカヴァーなど。
収録曲のほとんどがギターのみで演奏されています。
時にシタールなど民族楽器やマーチングドラムも。
そのギターの音色、フレーズと、マリアンヌ・フェイスフルの歌声が、イギリスの風景、歌の情景を眼前に浮かび上がらせてくれるような、感覚を与えてくれます。

これまでに聴いてきた、ブリティッシュフォーク、トラッド系のアルバムの中に入れても、自分の中ではかなり上位に入るアルバムです。
とにかく、このアルバムでのマリアンヌ・フェイスフルは最高に良い!



これはいつかアナログ盤が欲しい。


マリアンヌ・フェイスフル関連ブログ記事



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アコースティック音楽嗜好 ‐81‐

お気に入りのアルバム 2

昨日のブログ投稿で『エリック・サティ詩集』をとりあげたのだけど「そういえば、これしばらく聴いてなかったな」と思い出したアルバムがこれ。

John Hackett Steve Hackett『Sketches of Satie』(2001年発売)

スティーヴ・ハケット/ジョン・ハケット『エリック・サティの風景』

エリック・サティのピアノ曲を、ジョン・ハケットのフルート、スティーヴ・ハケットのガット・ギター向けに編曲し、2人で奏でたもの。

スティーヴ・ハケットは、言うまでもなく元ジェネシスのギタリスト。ジョンは彼の弟でフルート奏者。

ふだん「アコースティック音楽嗜好」で取り上げているタイプの音楽とは全く違うけど、まさしくアコースティック音楽。

ピアノ演奏で聴きなれた曲達が、フルートとギターで表現される面白さ。
これがピアノ以上に(というと語弊がありますが)とても曲に合っている。それは曲想に寄り添って編曲されているからだと思うのですが、元々フルートとギターのために作曲されたのではないかと思うほどに完成度の高い編曲、そして演奏。

フルートの深く豊潤な響きが奏でるメロディーラインに改めてサティの作り出した音楽の美しさを感じます。ピアノで聴くとメロディーと伴奏が一体となっているところを、フルートが(主に)メロディー、ギターが伴奏という形で聴いてみるとメロディーの美しさが浮き出てくるような感覚があるのです。

ちょっと面白いなと思うのは、はじめの6曲「3つのグノシェンヌ」「3つのジムノペディ」なのですが、どちらも3番、2番、1番と逆順に収録されています。
これはどんな意図でそうしたのか、聞いてみたい所です。
あらためてライナーを読んでみたけど、その点には触れていなかったので。

このCD、最近あまり聴いていませんでしたが、今後の人生においても、折々に聴いていく1枚である事に間違いありません。



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アコースティック音楽嗜好 ‐80‐

お気に入りのアルバム 1

お気に入りのアコースティック音楽系アルバムを思いつくまま、その時の気分で取り上げたいと思います。
第1回目は

America『Back Pages』(2011年発売)

アメリカというと、私が中学2~3年生ぐらいの時に「金色の髪の少女(Sister Golden Hair)」がヒットしていて、毎日のようにラジオから流れていました。
アコースティックギターのコードストロークにのせて、印象的なスライドギターではじまる、ポップな曲で、私の好みにどストライク。
当時シングル盤を購入し、その後、「金色の髪の少女(Sister Golden Hair)」が収録されたアルバム『Hearts』も購入、他のアルバムも中古レコードでコツコツと集めたものです。

私より前の世代では、デビューヒットの「名前のない馬」に思い入れがある方も多いでしょう。

そのアメリカ、2020年頃にデビュー50周年という事で、その前後、たくさんのベスト盤、編集盤、ライヴ盤などが次々と発売されました。その辺、全然ちゃんとフォロー出来てないのですが、その10年ほど前に出たこのアルバム『Back Pages』は、発売時にしっかりと手に入れ、愛聴してきました。

これは、カヴァー・アルバムなのですが、実にアメリカらしい、美しいカヴァー・アルバム。

取り上げている曲は「Woodstock」「Caroline No」「Time of the Season」など有名な曲が多く、どれも原曲への深い愛が感じられる、アレンジ、演奏、歌。

全曲素敵なのですが、その中で、特に思いを寄せている曲を3曲紹介します。
1曲目、2曲目とラストの曲。

1曲目「America」
Americaが演奏する「America」
シャレというかお洒落というか、曲はサイモン&ガーファンクルのあの「America」

後半ちょっと大仰過ぎる気もするけど、そんなところにも原曲へのリスペクトを感じます。

2曲目「Sailing to Philadelphia」

原曲は、マーク・ノップラーの2ndソロ・アルバムのタイトル曲で、マーク・ノップラーとジェイムス・テイラーのデュエット。独特のくせと深みのある2人が歌っている曲ですが、アメリカらしく若干爽やかな感じの歌声でカヴァーしています。原曲とは違った魅力のあるカヴァーで、しかも原曲の良さも伝わる。これはこれでかなり好き。大好き。そして選曲が素晴らしい。

ラストに収められた曲「My Back Pages」


ボブ・ディランの名曲「My Back Pages」のカヴァー
ピアノとアコーディオン(?)をバックにゆっくりとしたペースで歌わるこのカヴァーを聴いていると、改めてこの曲の美しさに感じ入ります。

気に入った人は、ぜひアルバムも聴いてみて下さい。
全曲、それぞれの良さが光るカヴァーになっています。



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