『オリエント急行殺人事件』を観て色々と思いを馳せる
2017年リメイク版の映画『オリエント急行殺人事件』をDisney+で鑑賞。
とても良い映画でした。
犯人も、結末も知っているのに、終盤には涙が出るほど心に響く場面が何度もありました。
それは、オリエント急行の乗客、ひとりひとりの心情にしっかり寄り添えるから。
なぜなら、演じる役者が全員見事に演じきっているから。
『スパイダーマンNWH』での快演が記憶に新しいウィレム・デフォーには、特に目を惹かれました。
ペネロペ・クルスの控えめな演技にも好感をもちました。
いや役者ひとりひとりあげていくよりも、やはり前述のように、全員が劇中人物になりきって、演じきっている、それが何より素晴らしく、映画に引き込まれ、心を惹かれた理由かと思います。
そこには、物語自体の求心力、監督であり主演も務めたケネス・ブラナーの求心力の大きさを感じました。
ところで『オリエント急行殺人事件』 といえば、どるたん+しゃあみんのCD『異郷の詩』に収録されている曲「Stazione」の歌詞にも登場いたします。
この歌の舞台は、ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅。
(Stzioneはイタリア語、日本語では駅)
歌詞を抜粋すると
駅へ入ると オリエントエクスプレスが ロンドンへと向かう 旅人を待っている あこがれていた オリエントエクスプレスに 巡り遭えた幸運に 心は高まっていく いつかこの豪華列車に乗って 旅をしたいと思っていた 子供の頃観た映画と 変わらぬその気高い姿 改めて心に刻む いつかこの列車に乗って 旅をしよう
「子供の頃観た映画と 変わらぬその気高い姿」の部分。
その「子供の頃観た映画」が、1974年版の映画『オリエント急行殺人事件』の事です。
子供というか、中学生ぐらいの頃、名画座で観たのが初見だったと思います。
実際には、ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅でオリエント急行にめぐり合った事はなくて、この部分はフィクションなのですが、ここに書かれている気持ちは本物です。
映画を観てからか、それ以前にオリエント急行の存在を知った時からか、今に至るまでオリエント急行には憧れつづけているのです。
そして、須賀敦子著『ヴェネツィアの宿』を読んだ時に、さらにその気持ちは大きくなりました。
この本が出版されたのは、1993年。
調度、私が初めてヴェネツィアを訪れた後に、イタリアから帰国したタイミングで、書店に平積みされていました。
「ヴェネツィアの事をもっと知りたい」と思って訪れた書店で、はじめに巡り合ったのがこの本だったのです。
この本はエッセイ集でヴェネツィアの事だけが書かれているわけではありませんが、その文章、内容には強く心を惹かれました。
そしてその中に出てくるオリエント急行のエピソードに涙しました。
著者の父は、若い頃にオリエント急行で旅をした事があり、亡くなる前に当時ミラノに住んでいた娘(著者)に「オリエント急行のコーヒーカップが欲しい」とみやげをねだる、そして・・・
このエピソードは今読み返しても涙が出てくるのですが、ミラノ中央駅にオリエントエクスプレスが入ってくる描写が実に見事で、実際には観ていないオリエントエクスプレスが、見慣れたミラノ中央駅の情景と重なって脳裏に浮かんでくるのです。(なぜか、それだけでも涙が出そうになる)
このエピソードが「Stazione」の歌詞に影響を与えている事は間違いありません。
この本は、最高のタイミングで巡りあうべくして巡りあえた本だと思っています。
この後、須賀敦子さんの著作は、目に付く限り手に入れ、読み続けてきました。
そして、その生き方、考え方に魅かれるようになっていたので、1998年に亡くなられた時には、深い喪失感を味わいました。
と、最後は、映画と関係ない話ですみません。
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