「本棚」(Live動画アップしました)のこと
先日、11月20日、どるしゃあGoodstock Tokyoワンマン公演から、1曲、Live動画をYouTubeにアップいたしました。
アップした曲は「本棚」
当日、本編で演奏した曲は、どるたん+しゃあみんとして活動を始めてから作った曲ばかりでしたが、1曲だけ10年ちょっと前に作った曲を演奏しました。
それがこの「本棚」
当時、バンドをやっていたのだけど、私の作る曲は、基本的に暗いし、遅いし、あまりバンド向きじゃなくて、「明るくてノリの良い曲が欲しい」というメンバーの希望があり、がんばって(無理して)作った曲。
ふだん私は、曲を作る時に、誰かの曲を意識したり、コード進行を真似したり、という事をした事がなくて、頭の中に浮かんでくるにまかせています。
結果として何かに似ている事は、あるかも知れませんが、他の曲を意識して真似しようとした事はありません。
ただこの曲だけは、ちょっと意識した物があります。
それはMott The Hoople
曲を具体的に真似したわけではないのだけど、Mott The Hoopleの「All The Way From Memphis」とか「Roll Away The Stone」とか、ああいうノリの曲を書きたいと意識して作ってみました。
あまり成功しているとは思わないけど。まあ、そういう気持ちで書いた曲。
長い活動歴の中でただ1曲だけ、何かを意識して作った曲。
それを最近、どるしゃあで取り上げるようになったのは、わけがあって、やはり、どるしゃあ曲も暗い、遅い、そして長い、そんな曲が多いので、少し気分転換できる場面を設けたかった。
あとは、この曲の歌詞。
実はけっこうどるしゃあの世界観にあっている、と初演時に感じたのです。
「明るくてノリの良い曲」というリクエストに応えて、がんばって作り出してはみたものの、歌詞までは明るくならなかったのよ。
一見(一聴)明るく聞こえるし、誰かに語りかけているような態で書いているけど、これ本当は
「本棚に囲まれた部屋から出られない男が、自分自身に語りかけている歌」
なのです。
まあ、自分の事ですけどね。
なんともどるしゃあ的でしょ?
そういう歌なので、しっかり気持ちを込めて歌えるのも、どるしゃあ的。
~「夢の浮橋」を渡り「夢の駅」に着いたら「キルヒャーの世界図鑑」を広げてごらん~
のくだりは、特に、毎回泣きそうな気持ちになります。
本の内容や、いつ、どんな気持ちで読んでいたか、とか、そういうものがたまにドッと頭(心?)の中に流れ込んできてしまう事があるのです。
歌詞を全編載せると
「本棚」 もしも今スグに遠い世界へ行きたくなったら ぼくの本棚を旅してごらん まばゆい光が見えるだろ? そうさあれが 『ブライト・ライト・ビッグ・シティ』の灯りさ 『中国行きのスロウ・ボート』に乗って、 『西方の音』に『耳をすませば』 『深夜特急』のレールの音と共に 『亡命旅行者は叫び呟く』 ほんの少しだけ 知らない街を歩きたいのなら ぼくの本棚を歩いてごらん その坂道を登った所にあるのが 『夢の木坂分岐点』さ 『コルシア書店の仲間たち』に会ったら 『見知らぬ旗』の下に集おう 『燃えつきた地図』は『花ざかりの森』へと 『微熱少年』を連れて行く 『夢の浮橋』を渡り 『夢の駅』に着いたら 『キルヒャーの世界図鑑』を広げてごらん 『争いの樹の下で』『「救い主」が殴られるまで』 『アリスの穴の中で』眺めていればいいさ Book is Real Book is Illusion Book is My Life もしも 心の闇を覗いて見たくなったら ぼくの本棚を覗いてごらん 『赤い部屋』の中で『踊る一寸法師』が見えるかい? 『蠢く触手』が『芋虫』みたいだろ? 『押絵と旅する男』と一緒に 『海底の魔術師』に会いに行こう 『幻影の城』から『暗黒星』を見上げて 『人でなしの恋』もたまにはいいさ Book is Real Book is Illusion Book is My Life
という歌詞。
当時、天井まであるような本棚に囲まれた部屋に生息していたので、その本棚に並ぶ本を眺めながら、背表紙のタイトルをランダムに取り上げて歌詞になるように並べてみたら出来上がりました。
本のタイトルは、特にジャンルや著者にこだわりなく、目に付いたもの、使えそうな言葉で選んだのだけど、3番だけは、全部、江戸川乱歩の作品名になっています。そこだけ、ちょっと特別。
Barclay James Harvest というバンドの曲で「Titles」という曲があります。
これは、The Beatlesの曲のタイトルを色々と歌詞に組み込んでいるもので、手法としてはそれと同じ。
作った時にはそれは特に意識していなかった、というか、「Titles」の事知らなかったのですが。
さて、そんな私の本棚。
当時は、出入り口以外は全部天井まで本棚みたいな部屋に暮らしていましたが、今、手元にあるのは、ごくごく1部だけ。
隙間家具みたいな縦に細長い本棚と、大きいスチール製の本棚(こちらは手前にCDが置いてあるので、奥にある本の背表紙がほとんど見えない構造)だけ。
なので、今だったらこの歌詞は絶対に書けなかった、あの頃だから書けた歌詞。
ちなみに今の隙間家具的本棚を1部お見せいたします。
写真撮影用に並べ替えたりしていないありのままの私。じゃなくて本棚。