東ティモール映画祭 その1
東ティモールフェスタの東ティモール映画祭で上映された作品6本が、7月25日まで、オンラインで無料視聴出来るという事で、6本分の視聴チケットを申し込んでみた。
(フェスタ自体はもう終わっています)
東ティモールフェスタ2021 オンライン映画祭
https://peatix.com/event/1924038
その中から、WEBサイトでの紹介順の上から2本
『アブドゥルとジョゼ(Abdul & José)』
『バリボ(Balibo)』
を鑑賞。
『アブドゥルとジョゼ(Abdul & José)』
このタイトル、アブドゥルとジョゼというのは、2人の人間の名前ではなく、1人の男が持つ、2つの名前。
どういう事かと言うと(以下、東ティモール映画祭の紹介文から)
1978年、空襲が山村を襲い、8歳だったジョゼは一度に家族を失った。生きるためインドネシア兵に付いて行き、終には国を後にする。35年後、NGOの支援を得てジョゼは母国に戻る機会を得た。彼は名前をアブダルに変え、改宗し、家族を築いていた。東ティモールの故郷の親戚は、ジョゼが亡くなったと思っていたが、再会を果たす。ジョゼは故郷や子どもの頃の記憶と、インドネシア人の家族の間で、新しい人生を出発させる。歴史に翻弄された青年を追ったドキュメンタリー。
正直な所、東ティモールという国について、「最近独立した国」という事以外何も知りませんでした。
かつてはポルトガルに植民地支配され、ポルトガルから独立すると、1975年にインドネシア軍が侵攻しインドネシアに占領されたという。
そんな東ティモールで、インドネシア軍の侵攻から、山中を逃げる最中に家族と離れ離れになってしまった8歳のジョゼ。インドネシア軍に連れ去られ(というかついていって)故郷を離れ、名前も宗教も変え、家族を築き、30数年インドネシアで暮らしてきたジョゼ(インドネシアではアブドゥル)。
彼の胸中に迫り、家族の思いや東ティモールの親戚達の思いなど、ひとつひとつ丁寧に描いた美しいドキュメンタリー映画でした。
そして、流れる音楽がとても私の好みにあっていて、特に本編中やエンディング時に流れる、女性ヴォーカルの(本来の意味の)フォークソング的な音楽がとても素敵でした。
本気で聴いてみたい(歌詞も知りたい)、と思ったので少し調べたのですが、ほとんど情報は得られませんでした。
下に共有したトレイラー映像の中盤で少し流れます。
https://www.youtube.com/watch?v=LrTnouLBsDE
『バリボ(Balibo)』
こちらはドキュメンタリーではなくて、実話を題材にした劇映画。
東ティモール映画祭の紹介文によると
1975年のインドネシアによる東ティモール侵攻の取材中、オーストラリアのテレビ局クルー5名がバリボー市内で殺害された。「Balibo Five」としても知られる事件とその真相を追うことに命をかけたひとりのジャーナリストがいた。実話を元にした本作は、国際映画祭でも高い評価を得ており、東ティモールミュージシャンのエゴ・レモスが手がけた主題歌は、2009年のAPRA Screen Music Awardsで最優秀オリジナル映画曲作曲賞を受賞。 監督:ロバート・コノリー/111分/2009年/オーストラリア・東ティモール/字幕作成:青山学院大学総合文化政策学部映像翻訳ラボ(宮澤淳一研究室)/協力:日本映像翻訳アカデミー
これはかなり凄い映画でした。インドネシア軍の侵攻がはじまる緊迫した状況がものすごくリアルに描かれていて、実際の記録映画かと思うほど。
思うのは、殺されてしまった5人の記者の心中は、どんなものだったのか。
もちろん「世界に知らせたい」という使命感、「すごい絵を撮りたい」というプロ意識など諸々あったとは思うのですが、同時に「記者なのだから殺されない」という意識もあったのか、とも思います。
海岸から大量に上陸を開始したインドネシア軍、護衛の兵士や住民が逃げるように促す中、逃げる人々と反対へと走り、結局インドネシア軍に捕まり殺されてしまうわけですが、最後まで「おれは記者だ」と主張を続ける。
でも、英語を理解しない兵士たちには全く伝わらないし、逆に伝わったら伝わったで、他国へ侵攻し住民を虐殺する様子など世界に伝えて欲しいわけないので、結局殺されてしまうような気がします。
そういう事を想像して、逃げるべき時はしっかり逃げましょう、という教訓めいたものも感じます。
まあ「それを言ったら決定的な写真や映像は撮れない」と言われそうですが、結果、殺されてフィルムも燃やされちゃっているので・・・・・・う~む、なんて事も私なりにあれこれ考えつつ鑑賞いたしました。
しかし、1975年、私が中学生の時に、こんな事が起きていたとは、全く知りませんでした。
まあ、大人(既に初老)になった今でも、ISISやらボコ・ハラムやらなにやら、世界のどこかでひどい事が起きていると、なんとなく知っている程度で、本当のところは何も知らないのですが。
この映画で重要な役割を果たしている、東ティモールの外務大臣(当時)、ジョゼ・ラモス=ホルタ(インドネシア侵攻時に国外に逃れ国際社会へ支援を訴えた、後にノーベル平和賞受賞)の事もほとんど知らなかった。
そして、この映画も、前述のドキュメンタリー映画『アブドゥルとジョゼ(Abdul & José)』同様、音楽が実に私好み!
こちらは男性ヴォーカルのフォークソングが流れます。これがとても深い味わいのある音楽。東ティモールミュージシャンのエゴ・レモスとしっかり情報がありました。
このエゴ・レモスさんの事も知らなかった。
数年前には来日してライヴもしてるし、昨年はオンラインライヴもしているようです。
これも全然知らなかったなぁ・・・・・・
何年か前までは、「ミュージック・マガジン」や「レココレ」など毎号隅々まで読んでいたから、こういう情報はけっこうしっかりとチェックしていたのですが。う~ん、改めてもう少しちゃんとアンテナ広げないと。
まあ、こうやって、どこかで偶然知るのも悪くないんですけどね。