アコースティック音楽嗜好 ‐71‐
心に残る名演奏 その3
Sinéad O’Connor – Mother
この演奏は、1990年、Roger Watersが多くのゲストアーティストと共にPink Floydのアルバム『The Wall』を全曲再現したコンサートでの演奏。
場所は、その前年に東西を隔てる「壁」が破られたばかりのBerlin。
この「THE WALL Live in Berlin」は、本当に素晴らしいコンサートで、私は、当時TV放送(確かWOWOW)を録画して何度も見返していました。
後に発売されたDVDも購入し、これも何度も観ています。
(同じことを以前も書いていました「Roger Waters – Comfortably Numb 2022」参照)
このコンサートの何が素晴らしいかと言えば、集ったアーティスト、ミュージシャンの顔ぶれは、もちろん素晴らしいのですが、そのアーティストたちが皆「THE WALL」の世界観、コンセプトをしっかりと理解した上で、それぞれの表現で「THE WALL」の曲を、歌を、表現している事。
例えば「Another Brick In The Wall Pt.2」を歌うCyndi Lauper
例えば「Young Lust」を歌うBryan Adams
例を2つだけあげましたが、この2人に限らず、とにかく全員が見事に「THE WALL」を表現しています。
そしてキャスティングがすごい。
上にあげたCyndi LauperやBryan Adamsって、あまりPink Floydとの関係性が感じられないアーティストなのですが、そういう人たちが見事に嵌っていて、全力で表現している、その様を見ているだけでも感動してしまうのです。
すべてが「心に残る名演奏」と言っても過言ではない、素晴らしいコンサート。
前置きが長くなりましたが、そんな中、私の「アコースティック音楽嗜好」的に「心に残る名演奏」と言えば、Sinéad O’Connorが歌う「Mother」と、Joni Mitchellが歌う「Goodbye Blue Sky」が双璧。
どちらも楽曲としても大好きな曲なのですが、この「THE WALL Live in Berlin」での表現は、オリジナル『THE WALL』を凌駕していると言えるほどの名演奏。
2曲とも取り上げたいのですが、1曲に絞ってSinéad O’Connorが歌う「Mother」を。
Roger Watersが弾くアコースティックギターとThe BandのGarth Hudsonが弾くアコーディオンに乗せてSinéad O’Connorが歌う「Mother」。それだけでも、ちょっと鳥肌物。
しかしそれだけではなく、サビのコーラスで、The BandのRick DankoとLevon Helmが入ってくる所、この2人とRoger Watersが3人で1本のマイクで歌う場面。ここは何度観ても涙が滲んでしまう程の感動を覚えます。曲の盛り上がりどころと、この3人の絵的なすごさ。
そしてSinéad O’Connorの歌唱。ちょっと鬼気迫ると言ってもいいような、心に訴えかけてくる表現。
この曲、この演奏のすべてに感動を覚えます。
つい最近、このDVDを改めて観たのですが、この曲には、また泣かされてしまいました。
それは、これまでの感動とは、少し違う涙。
前列に並ぶ5人。
Sinéad O’ConnorとThe BandのGarth Hudson、Rick Danko、Levon Helm、そしてRoger Waters。
この5人のうち、Rogerを除く4人は、既にこの世にいないのです。
なんとも切ない気持ちと、この名演奏を残してくれた事に対する感謝のような思いが混ざり合った、ちょっと表現することが難しい、たまらない気持ちになっての涙でした。
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